みらい図鑑

Vol.55 「砂浜美術館」 高知県

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高知県の黒潮町に、建物を持たない美術館があります。
長さ4キロの砂浜そのものを美術館に見立てたのが「砂浜美術館」。
29年前に生まれました。

BGMは波の音、夜の照明は月の光。
目の前に広がる“様々な自然”が、24時間・365日展示されている作品です。



NPO砂浜美術館・西村優美(にしむら・ゆみ)さんのお話です。

「常設展示の作品だと、たとえば、砂浜についた小鳥の足跡や沖を泳ぐニタリクジラ。
たくさんの作品に溢れています。

砂浜美術館の活動は30年近くになっているんですが、最初から関わっている方が、
“毎日見ていたら、海も空も砂も、毎日、新しい発見の連続なんだ”って、
おっしゃっていたんです。

小さな変化を楽しみながら飽きることなく付き合うことで、一見、変わらない自然って、
ずっと守っていくことができるのかなって思っています。」




美しい砂浜を残したい、という思いはもちろんあるけれど、
それは決して、塀で囲んだりして自然を保護するのではなく、“付き合う”という姿勢。
そのままの自然の魅力を体感することで、この場所をもっと大切にしたい、
そんな気持ちになるようなサイクルを作っていきたいと西村さんは語ります。



海も空も砂も、毎日が新しい発見の連続。
できるだけ多くの方に訪れてほしいと、砂浜美術館では、毎年5月に「Tシャツアート展」を
開催しています。



全国から寄せられたアートがプリントされた、真っ白なTシャツ、およそ1000枚が
砂浜に展示される様子はまさに圧巻。

今年の開催は5月3日から8日まで。
是非、皆さんも「砂浜美術館」で、新しい何かを発見してみては如何でしょうか?
http://www.sunabi.com/exhibition/

Vol.54 「おのくん」 宮城県

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今回のタカラモノは、「おのくん」。
「おのくん」とは、おさるさんの人形の名前です。

2011年3月11日。
東日本大震災のあと、宮城県東松島市「小野駅前応急仮設住宅」の人々の、
暮らしがあった奥松島の復興を願って、2012年4月20日に生まれたキャラクターです。



「おのくん」は、大きさも色も柄も違う、さまざまな“靴下”を縫い合わせた
“ソックスモンキー”。
作り始めたのは、仮設住宅に暮らすお母さんたちでした。

震災前のゆったりとした暮らしから一変、被災して先の見えない状況のなかで、
さまざまな困難に立ちむかいながら、「めんどくしぇ」とぼやきつつ、
前向きに、新しい未来を自分たちの手で築いていこう、という思いが込められています。



小野駅前郷プロジェクトの共同体表・武田文子(たけだ・ふみこ)さんのお話です。

「なんか、あまりの大きさのショックに笑うのはできたんですね。
でも泣くのは、涙が出なかったんですよ。二年ぐらい涙が出ませんでしたね。
なにかをしないといられない精神状態だったんですね。」

仮設住宅の集会所に集まったお母さんたちが作る「おのくん」。
ひとつひとつ顔は違いますが、“東松島を知ってほしい”、“東松島に来てみてほしい”という
願いが込められています。

「おのくん」は購入することができ、購入した人は「里親」と呼ばれています。



「おのくんそのものはお人形ですけど、これを見ると、
“ああ震災で出来たやつだよね”って、
何年後も、これを話題に震災の話ができたらいいかなって思っていますね。
忘れないように、っていう意味で。」

里親ひとりひとりがみな家族・・・そんな想いでお母さんたちは毎日、一針一針、
絆を紡いでいます。
手に取った人、ひとりひとりが東松島でつながっている家族。
「おのくん」の里親は、いまも増え続けています。



おのくんウェブサイト
http://socialimagine.wixsite.com/onokun

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