みらい図鑑

Vol.53 「組紐」 三重県

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1本の映画の大ヒットによって、日本の“ある伝統技術”が、
世界中の注目を集めていることをご存知でしょうか。

それは、何十本もの糸を組み合わせて作る「組紐」。
映画『君の名は。』で、物語の重要なカギを握るアイテムとして、組紐が描かれています。



長い伝統をもつ日本の優れた工芸品の一つである「組紐」。
奈良時代以後に日本で作り始められた組紐は、経巻・巻物・甲冑や刀の紐などに利用され、
その後、武具から着物の帯締に姿を変えるようになりました。

日本を代表する組紐の産地のひとつが、三重県伊賀市。
この地域では、伝統を守りながらも時代の流れに合わせた、
様々なものづくりがおこなわれています。



創業明治35年。
「組紐工房 廣澤徳三郎」3代目・廣澤浩一さんのお話です。

「組紐をはじめて45年ぐらいになります。
わたしのところはネクタイを開発しまして、組紐ネクタイとして売っているんですが、
ほかにも、キーホルダーやブレスレット、ストラップ・・・。
大変喜んで頂いているんですが、技術を持っている方が高齢化してしまいましたので、
もう10年ぐらいで無くなるんじゃないか、そんな危惧もあります。
全国には趣味を持っている方もいますので、
日本の中で組紐を残していってもらいたいなと思っています。」



廣澤さんの工房では、20分ほどでキーホルダーを作ることが出来る、
組紐体験もおこなっています。

昭和51年には国の伝統的工芸品に指定され、脈々と受け継がれ現在に至る組紐。
後継者不足の危惧もある中、映画によって多くの人の注目を集めることとなりました。

古き良きものを、今に、そして、未来に。
この先もずっと受け継がれる伝統の技であってほしいですね。

Vol.52 「雪平鍋」 大阪

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日々の料理には欠かせない道具、そのひとつが「鍋」。



熟練した職人さんの手によって一つ一つ、丹精込めて作られる究極の手打ち鍋。
そんな、一生ものの鍋を作り続けている方が 大阪にいらっしゃいます。
おじいさんの代から始まり、現在3代目。
有限会社「姫野作」の代表・姫野寿一(ひめの・ひさかず)さんのお話です。

「うちのメインは片手鍋、通称、雪平鍋って言うんですけど、
既製品をたとえば10個注文貰って、同じサイズの同じような形のものを
10個納品しても、10個とも同じ顔じゃないんですね。
全て1回ずつ叩いていくので、あがりが全部違うんですね。」




鍋を作るのは1日から3〜4時間。深さ、厚み、コリ加減、時間などで金額が変わります。
一個物は、お客さんの“こういう鍋が必要なんだ”という要望にこたえるため、
いくら難しくてもやり通すしか無い、お客さんが待っている途中で投げ出せない、と
姫野さんは語ります。



姫野さんの手によってひとつひとつ作られていく雪平鍋。
「姫野作」という刻印が打ち込まれた鍋は、日本を代表する多くの料理人も愛用しています。

「55年前のアルミの雪平鍋が、いま、まだ現役で使えています。
それで、銅でしたら、100年使えるっていうことで販売しているんですね。
お母さんとか、おばあちゃんが使っていたお鍋を長く使ってもらう、っていうことを
意識して使ってもらっています。」



料理は食材、作る人の腕があり、姫野さんの「鍋」は3番目に満たす道具。
和食が無形文化遺産になり、和の道具も海外にも発信されています。

料理はその国ならではの道具を使わないと出ない、、、
そんなことを多くの人が理解している中だからこそ、姫野さんの後継者への期待も募ります。

匠の技で仕上げられた鍋、
100年後の台所ではどんな料理ができているのでしょうか?

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