みらい図鑑

Vol.49 「博多人形」 福岡県

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土による素焼人形として知られている福岡県の伝統工芸品、「博多人形」。

その歴史は古く、1600年、安土・桃山時代にまでさかのぼります。

黒田長政の筑前入国に伴って多くの職人が集められ、
その職人たちから素焼き人形が生まれ、現在の「博多人形」の礎となりました。

江戸時代の後半には全国に流通するようになり、明治時代にはパリ万博に出品され、
美しくもやさしい姿に世界中の注目が集まりました。



現代の名工と呼ばれる人形師であり、博多人形商工業協同組合の会長をつとめる、
武吉國明(たけよし・くにあき)さんにお話をうかがいました。

「私は15歳から人形作りをやっているんですね。
もう70過ぎて76歳になりましたけど、この年になって、やっと、
ああ、これが博多人形の魅力なんだと、なんとなく作りながら、
自分の想いのなかで感じることはありますね。」



上薬がかけてあり、表面がガラス状にツルッとしていて、
見た目がきれいな通常の人形に対して、
上薬を使わずに素焼きの状態、つまり”ザラザラ”で素材のままなのが博多人形。

武吉さんは、博多人形の魅力をこう語ります。

「博多人形をご覧になって、やさしさを感じられると思うんですね。
これは、作る作家の感性ですよね。
その人の心のこもったものが、自然とにじみ出て、
ご覧になった方がそれに感銘するわけです。それが、博多人形の魅力ですよ。」



博多人形のやさしさや暖かさは、元来 “土” が持っている力。
そして、作家の“やさしさ”そのもの。

何も語らない博多人形、実は多くのことを教えてくれているんですね。

Vol.48 「俳句甲子園」 愛媛県松山市

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今回のタカラモノは、日本文化を代表する定型詩、五・七・五の「俳句」です。

「柿くへば  鐘が鳴るなり  法隆寺」で有名な俳人・正岡子規が生まれて今年で150年。
そのふるさとの愛媛県松山市を舞台に、毎年こんな大会が行われています。
それは「俳句甲子園」。

「俳句甲子園」は高校生の競技大会。
5人1チームで赤白に分かれ、鑑賞力を計ります。
勝敗は俳句の出来だけではなく、質疑応答でのディベートも面白く、
その鑑賞力も評価に入るんだそうです。
審査員の支持を得た方が勝ち。つまり試合になっています。



NPO法人「俳句甲子園」実行委員会、会長の日野裕士(ひの・ゆうじ)さんに伺いました。

「もともと、松山市というのは俳句が盛んな所でして、
小学生中学生の中には、大変、みずみずしい感覚を持った生徒たちがいるんですね。
でも、高校生になると俳句を辞めてしまうわけです。
なんとか気持ちを俳句に向けさせたいという想いから、
俳句甲子園というものをはじめました。」

俳句甲子園がはじまって、今年で20回。
俳句をはじめる高校生は、年々増えているんだそうです。

「俳句というものを学ぶ上で一番大切なことは、季語をいかに知っていくか、ということ。
俳句を学ばなければ、見えなかったものが見えてくるようになる。
聞こえなかったものが聞こえるようになる。
心豊かな高校生たちが、本当にたくさん増えているように思います。」



いままで聞こえなかったものが、聞こえるようになる。
そんな感性を養えるのは俳句だからこそ。

最後に日野さんから、高校生へ向けた一句、詠んでいただきました。

「待ち人来ず 画面をなぞる 指へ雪」 三津浜わたる(俳号)

※説明
俳句を始めると、「待つ」という行為も苦にならなくなるものです。
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