VOL.273「金沢でいちばん古いあめ屋が作る「じろあめ」」

豊かな和菓子文化を誇る石川県金沢市。
この町で、190年以上の間、
変わらない製法で飴をつくっているのが、「飴の俵屋」です。

名物は、「じろあめ」。
加賀地方の古い方言で、「じろ」は、「やわらかい」という意味。
その名の通り、
水あめ状の「やわらかい飴」が壺に入って売られています。

「飴の俵屋」、俵 冬樹(たわら・ふゆき)さんのお話です。
「創業した1830年には、天保の飢饉もあって、
栄養価のあるものが手に入らなかったと聞いています。
“じろあめ”は、赤ちゃんを抱えたお母さんのために、
なにかできないか、という想いから生まれた飴なんです。」

砂糖がとても貴重で、入手が困難な時代に誕生した「じろあめ」。
原料は、米と大麦、そして、水だけです。
洗ったお米を一晩寝かせるところから始まり、
麦芽を合わせて糖化させ、釜で炊き上げ、水あめ状にして壺に入れて商品化。
店頭に並ぶまでに、約4日間という日数をかけて、じっくりと丁寧に仕上げられます。

200年近くもの間、変わらぬ材料と製法でつくられる「じろあめ」。
金沢の歴史とともに生き続けてきた食文化を守りたい、
と俵さんは語ります。
「お米から甘味が生まれる、という先代の知恵がずっと受け継がれてきました。
効率を求めるのではなく、これまで作ってきたものを守るために、
この先の世代も作り続けていけるように、
私たちが頑張っていきたいと思っています。」

熟練の職人さんが、穀物から優しくて自然な甘味を引き出す「じろあめ」。
そのまま食べてももちろんおいしいですが、
料理に使うと、より一層、コクと深みが生まれて、
艶も出るんだそうですよ。