みらい図鑑

VOL.164「福井県 おおむぎママの麦ストロー」

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麦茶に使われる、「六条大麦」。
その生産量・日本一を誇るのが福井県です。

地元が誇る大麦の魅力を全国へ発信したいと、一人の女性が立ち上がりました。
「福井大麦俱楽部」の代表、重久弘美(しげひさ・ひろみ)さんです。

手がけたのは、大麦で作るストロー。
2019年7月、「おおむぎママの麦ストロー」が発売になります。

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現在、世界中で大きな問題になっているのが、「マイクロプラスチック」。

この微小なプラスチックの粒子が大量に海に流れ、
このままでは、プラスチックの量が魚の量を超えてしまうと言われています。

そんななか、プラスチック以外の材料で作られるストローが注目を集めています。
そのひとつが、大麦。

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かつて、お店をやっていたときに、
麦茶に麦ストローを刺して、お客さんに「どうぞ」と手渡していた重久さん。

大麦の生産が日本一の福井県ですが、
生産された麦は一度、県外へ出て、麦茶やもち麦などの商品になって帰ってくるため、
身近に大麦の製品がなかったといいます。

そこで、自分たちで作ることで、エコにも地産地消にもつながると感じ、
本格的に「大麦ストロー」の製作に乗り出しました。

「ストローなんてほんとに小さいことなんですが、それを手にしていただくことで、
エコ生活だったり、生活の改善につながっていくことができれば嬉しいですね。」

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茎の皮を剥いで、滅菌加工が施されている「おおむぎママの麦ストロー」。
麦のストローは丈夫で、水にずっと浸けておいても大丈夫なんだそうです。

「このストローを使っていただくことで、
福井から、大麦畑の風みたいなものを感じてもらいたいなと思っています。
そう思いながら、私はこれまで、手作りで作ってきました。
金色の風に乗って揺れている大麦みたいなものを想像していただけると嬉しいですね。」

福井から全国へと発信される「麦ストロー」。
エコなストローをきっかけに、「福井の大麦」を未来へとつないでいきたい。
そんな思いを抱く重久さんの挑戦は、これからも続きます。

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VOL.163「和歌山県 棕櫚箒」

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掃除用の道具として平安時代から使われてきた箒。
草や竹など、様々な材質で作られますが、今回、注目する素材は、棕櫚(シュロ)。
シュロの木の皮で作る「棕櫚箒(しゅろほうき)」です。

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シュロは、ヤシ科の植物。
南九州が原産で、手の平のような形の葉がたくさん伸びるヤシの木に似た植物です。

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シュロの皮は、いろんな天然繊維の中でも優れた性質があり、
強くて柔らかく、弾力性や耐久性に優れているといいます。

シュロ自体に油分があり、水にも強いことから、
古くから、箒だけでなくタワシを作ったり、
かつては、漁網に“棕櫚縄”が使われていました。

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「シュロの毛というのは、非常に耐久性があるんですね。
長く使われる方でしたら、10年以上使っている方もいらっしゃいます。
愛着が出てくると、生活の一部になるんですね。
掃除をすることが楽しい、と感じながら、使っている方もいます。」

そう語るのは、「山本勝之助商店」の土田高史さん。

「山本勝之助商店」は、和歌山県で、シュロの木から箒を作り続ける創業明治13年の老舗です。
シュロの木の幹の皮を細かく裂いて、
職人さんが、一本一本、ハンドメイドの箒を作っています。

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機械で作ることができなかった昔は、
竹の枝にシュロの木の皮を巻いて、束ねて箒を作っていました。
それが、今日の和歌山県におけるシュロ産業のきっかけです。

丈夫で長持ち。
優れているのはその機能性だけでなく、独特の風合いを持つ見た目の美しさです。

壁につるして、敢えてインテリアとして見せる“しまわない掃除道具”、「棕櫚箒」。
愛好者がますます増えそうな逸品ですね。

土田さん、こんなメッセージも残してくれました。

「身の回りのものは、化学繊維とかハイテクとか、どんどん便利なものに置き換わっていきますが、
ちょっと不便だけど、
自分たちの生活に馴染んだものも残ってほしいと思います。
お気に入りの箒を持つと、掃除が楽しくなりますよ!」

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