みらい図鑑

VOL.158「新潟県 パン切り包丁」

radikoで再生する
null

食パンを切るとき、普通の包丁で切って、パンくずがポロポロと出てしまう、、、
そんな経験のある人も多いのではないでしょうか?

鍛冶の町として知られる新潟県三条市。
この町にある昭和23年創業の「株式会社タダフサ」は、
常に進化を続けている老舗包丁メーカーです。

null

長年培った確かな技術のもと、現代のライフスタイルに合わせた包丁を、と、
2012年にはオリジナルブランド「庖丁工房タダフサ」が誕生。
いろんなタイプの包丁を製造しています。

そのひとつが、「パン切り包丁」。
先端の部分だけが波の形をした刃が特徴的な包丁です。

null

「庖丁工房タダフサ」の三代目、曽根忠幸(そね・ただゆき)さんにお話を伺いました。

「ヨーロッパのパンは保存食としてのパンなので、
硬いものを切るのにノコギリのほうが適していると思うんですが、
日本の食パンなんかは、外は耳があっても中は柔らかいですよね。
そういったものを切るには、
日本の包丁と西洋のノコギリのハイブリッドみたいな形が理想的じゃないかなと思って、
それで作ってみたら、パンくずが出ず、すっと切れる、そういうパン切り包丁が生まれたんですね。」

世界中のパン好きをうならせる、 切れ味のよい「パン切り包丁」。
全ての工程は職人さんたちの手作業です。

null
null

「伝統というのは、常に変わっていくものなんですね。
その時代に合わせたものを取り入れながら、進歩していくという。
しっかりと産地として、周りを巻き込みながら、
しっかりと残すのが、ぼくの夢というか目標というか。
そういう気持ちですね。」

「庖丁工房タダフサ」では砥石も製造していて、
品質の良さはもちろん、デザイン性にも優れた逸品です。

null

曽根さん、「子供たちの憧れになるような仕事がしたい。」と話してくれました。

新潟県三条市にある工場では、 職人の手仕事を間近で見学できます。
お近くにお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
http://www.tadafusa.com/shop/
https://www.facebook.com/tadafusa

null


VOL.157「静岡県 掛川葛布」

radikoで再生する
null

「秋の七草」として万葉集でうたわれる植物のひとつ、「葛(くず)」。
ご存知、食品の「葛」と同じ植物から、「(葛布)くずふ」という布も作られています。

葛の繊維から織り上げた布、「葛布」は、静岡県掛川市の伝統工芸品。
自生する植物から作られるその布は、とても軽く、それでいて、傷みにくくて丈夫なのが特徴。
壁紙や掛け軸などに使われています。

null

“この地に、葛布の製法がうまれたのは、
昔、掛川西方の山中にある滝の側で庵を結んでいた行者が、
滝水に打たれ、さらされている葛蔓を見つけ、それが繊維として使用できると考えて、
信徒の老婆に葛の繊維を採る方法を教え与えたことからと言い伝えられております。“
(「川出幸吉商店」のHPより抜粋)

そんな掛川市で、手織りの葛布工房を営むのが、
創業明治3年の「川出幸吉商店」。

null

5代目店主、川出英通(かわで・ひでみち)さんのお話です。

「葛という植物自体を知らない人が多いんです。
葛を取るのは、夏の間。それがだいたい1週間。
そこから細く裂いていって、“より”が無いから結んで、
1本の長い糸にするには、だいたい1ヶ月半かかります。」

ツルがまっすぐに伸びた葛を探して採取、まず大釜で煮るところからはじめます。
その後、発酵〜洗い〜天日干しの工程を経て、
繊維の層だけを取り出し、細く裂いて糸に仕立てます。

null

ひとつひとつの工程にじっくりと時間をかけておこなう葛布づくり、
最後は機織り機を使って、丁寧に織られていきます。

「私のところで織るんですね。手織りです。
そうすると、10メートル織るのにだいたい1ヶ月半。
けっこうかかるんですよね。」

null

重労働で手間がかかるため、職人の数が激減してしまったという葛布づくりですが、
川出さんは、葛布を次の時代へ伝えていきたいと、
財布や名刺入れなどの生活雑貨も作っています。

使っていくうちに手に馴染んでいく葛布。
皆さんもその魅力を実感してみませんか?

Prev [P.93/171] Next