みらい図鑑

VOL.156「白雪ふきん」 奈良県

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かつて、夏の虫除けには欠かせない存在だった、「蚊帳」。

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そんなものづくりの現場で、ひょんなことから生まれた「ふきん」があります。
名前は「白雪ふきん」。

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蚊帳の生地を裁断する際にでてしまうハギレ。

これを捨てるのはもったいないと、生地を重ね折りしてふきんにしたところ、
とても使い勝手が良く、友だちにあげたら評判も上々。

時代とともに蚊帳の需要が少なくなり、
だったら、蚊帳生地でふきんを作ってみたらどうか。
そうして、奈良県の織物技術に裏打ちされた、万能ふきんが生まれました。

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「白雪ふきん」、代表の垣谷欣司(かきたに・きんじ)さんのお話です。

「きれいな間は大事な食器を拭いてもらって、
ちょっとクタってきたら次は台拭きテーブル拭きにして、
その後はお雑巾におろしてもらってもいいし、
革靴とかハンドバックを拭いてもらえばツヤも出ます。」

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現在は、ふきん用に改良した専用の糸で、
蚊帳の生地に仕立ててふきんを作っています。

その過程で重要なのは、生地に仕立てる前の糸。
もとの綿が粗末だと安くはできますが、良いものにはならないといいます。
垣谷さんたちは、しっかりと材料にこだわっているのです。

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そして、エコであることも実感できるという「白雪ふきん」。

「最後は、植木鉢の下に敷いてもらって土どめにしてもらえたら、
3年ぐらいで溶けて土に還ります。
そういう風に使ってもらえたら、捨てるところもないし。
だから、あんまり儲からないんでしょうね、ライフサイクルが長いので。」

その人の姿勢や生き様が影響する“ものづくり”。

素材にこだわり、丁寧に良いものを作る。
昔から変わらぬ姿勢で、これからも長く使ってもらえるものを作っていきたい、、、
垣谷さん、最後にそう話してくれました。

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VOL.155「宮島のしゃもじ」 広島県

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広島県の宮島といえば、
海に浮かぶ、大きな朱い鳥居が印象的な厳島神社が有名です。

そんな宮島が世界に誇るものづくり。
それは、「しゃもじ」です。

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宮島伝統の木工工芸の技術を生かして、
現代の生活に合ったしゃもじを製造している「宮島工芸製作所」。

すべて国産にこだわり、材料は、主に中国地方と九州地方の木を使用。
とくに、豊かな森林が広がる広島県北部の木を使い、最後まで手作業で仕上げています。

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4代目の藤井 佐武郎(ふじい・さぶろう)さんにお話を伺いました。

「国産の山桜という木を中心に使って作っています。
桜材は、とても硬くて弾力があって木目が細かい材料なので、木の持つ風合いがいいんです。
桜の木は、使用しているうちに赤みが増してくるんですね。
使っているうちに愛着が生まれて、自分の道具になっていくのかなと思いますね。」

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昔は、宮島にしゃもじ職人が300人いたと言われています。
ですが、時代の流れによって職人の数が激減。
一定の量を作っているのは、「宮島工芸製作所」だけになりました。

後継者不足に悩む“ものづくり”の世界において、
作り続けていくことが大事だと藤井さんは言います。



大事に手入れをすれば長く使えて、
使い込むほどに、風合いがいい感じになっていく木のしゃもじ。

長年、愛着を持って使えるように、
飽きのこない形であること、丈夫であること、そして、比較的、手に取りやすい価格であること。
そういったことを大切に日々、仕事に励んでいるんだそうです。

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「ぼくたちが大事にしていることは、
毎日の生活の中で、気軽に、気負わずに使いこんでいける道具を作ること。
それを目指しています。」

たくさんの人に手に取ってもらうことが、次につながっていく。
藤井さんの思いと宮島の伝統技術、
後世に伝え続けていってほしいですね。
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