みらい図鑑

VOL.157「静岡県 掛川葛布」

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「秋の七草」として万葉集でうたわれる植物のひとつ、「葛(くず)」。
ご存知、食品の「葛」と同じ植物から、「(葛布)くずふ」という布も作られています。

葛の繊維から織り上げた布、「葛布」は、静岡県掛川市の伝統工芸品。
自生する植物から作られるその布は、とても軽く、それでいて、傷みにくくて丈夫なのが特徴。
壁紙や掛け軸などに使われています。

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“この地に、葛布の製法がうまれたのは、
昔、掛川西方の山中にある滝の側で庵を結んでいた行者が、
滝水に打たれ、さらされている葛蔓を見つけ、それが繊維として使用できると考えて、
信徒の老婆に葛の繊維を採る方法を教え与えたことからと言い伝えられております。“
(「川出幸吉商店」のHPより抜粋)

そんな掛川市で、手織りの葛布工房を営むのが、
創業明治3年の「川出幸吉商店」。

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5代目店主、川出英通(かわで・ひでみち)さんのお話です。

「葛という植物自体を知らない人が多いんです。
葛を取るのは、夏の間。それがだいたい1週間。
そこから細く裂いていって、“より”が無いから結んで、
1本の長い糸にするには、だいたい1ヶ月半かかります。」

ツルがまっすぐに伸びた葛を探して採取、まず大釜で煮るところからはじめます。
その後、発酵〜洗い〜天日干しの工程を経て、
繊維の層だけを取り出し、細く裂いて糸に仕立てます。

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ひとつひとつの工程にじっくりと時間をかけておこなう葛布づくり、
最後は機織り機を使って、丁寧に織られていきます。

「私のところで織るんですね。手織りです。
そうすると、10メートル織るのにだいたい1ヶ月半。
けっこうかかるんですよね。」

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重労働で手間がかかるため、職人の数が激減してしまったという葛布づくりですが、
川出さんは、葛布を次の時代へ伝えていきたいと、
財布や名刺入れなどの生活雑貨も作っています。

使っていくうちに手に馴染んでいく葛布。
皆さんもその魅力を実感してみませんか?