VOL.195「足袋のランニングシューズ」
「足袋づくりの街」として、300年以上の歴史を誇る埼玉県行田市。
木綿が採れたことや、江戸から中山道が伸びていて宿場が近くにあったことから、
江戸時代に城下町を中心に足袋づくりが奨励され、
足袋の産地として知られるようになりました。
この町を舞台にして、老舗の足袋メーカーがランニングシューズを開発する物語が、
テレビドラマでも大ヒットしました。
ですが、これは物語の中だけの商品ではありません。
裸足に近いランニングシューズを作れないか、という熱いラブコールを受けて、
足袋で作ったランニングシューズ、「MUTEKI」が誕生しました。
開発したのは、行田市に工場を構える老舗・足袋の館、「きねや足袋」。
3代目・代表の中澤貴之(なかざわ・たかゆき)さんのお話です。
「工場内というか、会社のなかでも、ごく限られた人数でやっていまして、
当時、親父が社長だったんですが、
内緒にして、強い想いで1年半という期間を経て開発しました。
天然ゴムを使っているので、接着剤を使わずに、すべて手縫いなんですね。
その軽さから、今までにない履き心地で、
気持ちがいいという声をいただくことが多いですね。」
足袋といえば、着物、仕事、、などのイメージがありますが、
中澤さんは、違ったチャンネルで、足袋を役立たせたいと思っていたといいます。
“人間の機能を活性化させる”というコンセプトのもとに作られた、足袋のランニングシューズ、
どんな魅力があるんでしょうか?
「足袋は、あまり知られていなくて日常的にも使われていないんですが、
蒸れにくく、足の匂いを軽減したり、角質が取れて足裏が柔らかくなったりとか、
指を使うので脳に刺激を与えたり、
膝や腰の痛みを軽減する、、、というような魅力があるんですね。
こういった魅力を未来へしっかりとつなげていきながら、
靴やスリッパのように、日常の履物として使ってもらえたら嬉しいなと思っています。」
伝統に裏打ちされた高い技術があってこそ発信できる、革新的なアイデア。
足袋のランニングシューズの愛用者は、全国に少しずつ広がっているようです。