VOL.206「旅する丸干し」
かつては50を超える数の干物屋がしのぎを削った港町、鹿児島県阿久根市。
現在でも、阿久根港を中心に10軒以上の干物屋があり、
代表する魚の一つが、「ウルメイワシ」。
“朝獲れ”のウルメイワシを扱う干物専門の漁師もいます。
朝獲れウルメイワシは、お腹の中にエサが残っていないので苦みが少ないのが特徴。
食べやすく、噛めば噛むほど旨味が出てくる魚です。
そんな干物の魅力を、「若い人にも伝えたい」という想いから生まれた商品があります。
名前は「旅する丸干し」。
提案したのは、
昭和14年創業の老舗水産物加工販売店、「下園薩男商店」。
人口の減少や食文化の流行の変化に伴って、
若い世代の食べる機会が減り、需要も少なくなっていった丸干し。
魚の美味しさや干物の美味しさを伝えて、間口を広げたいという思いから、
この商品が誕生しました。
プレーンタイプに加え、
南イタリア風なら、「ドライトマトとガーリック」。
プロヴァンス風なら、「オリーブとハーブ」。
マドラス風なら、「カレーとミックスビーンズ」。
世界の味をイメージしたオイルに漬けられたウルメイワシが、
かわいらしく瓶詰めされた商品です。
「下園薩男商店」、池袋玲子さんにお話を伺いました。
「“旅する丸干し”は、丸干しが世界中に旅をして、
そのイメージの味付けになって帰ってきた、というコンセプトで4種類あります。
わたしには子供もいますが、
いろんな味を小さいうちから経験して欲しいな、という思いがすごくあるんですね。」
「味の記憶って、とっても大切なんです。
甘かったり、柔らかかったり、そういう食が今は好まれがちですよね。
ウルメイワシは確かに硬く、苦味も多少はあります。
そういう味を小さい時から知ることで、味の幅が広がるんじゃないかと思うんですね。
そういったところに、未来へつなげていきたい想いとして、
アプローチしたいなと考えています。」
世界を渡り歩く、日本の丸干し「旅する丸干し」。
長い間、阿久根という地域の中で親しまれてきた食文化が、全国へ広がっています。