VOL.210「手前みそづくり教室」
「手前みそ」という表現がありますが、その言葉の由来は文字通り、味噌。
自家製の味噌を作ることが一般的だったかつての時代、
おいしく作れたら、自分が作った味噌を「手前(自分)どもの味噌は・・・」と、
謙遜しながらも自分で褒めていたんですね。
つまり、「手前みそ」とは、「自家製のみそ」という意味。
そんな、家庭の味の象徴とも言える「味噌作り」の文化を残したいと、
老舗のお味噌屋さんで、「手前みそ教室」が開催されています。
この教室を開いているのは、
山梨県・甲府市で「甲州みそ」を製造している明治元年創業の老舗、「五味醤油」。
ここでおこなわれる「手前みそ教室」は、混ぜて、こねて、丸めるだけ。
材料はすべて用意されているので、初心者でも気軽に参加できるのが嬉しいポイント。
誰でも簡単においしく出来上がるので、リピーターも多く、
毎回、すぐに定員に達するほどの人気ぶりをみせています。
「五味醤油」、六代目の五味 仁(ごみ・ひとし)さんにお話を伺いました。
「毎回、味噌作り教室の雰囲気がすごく良くて、
人と人をつなげたり、和やかな雰囲気にするっていうのは、餅つきともすごく似ていて、
みんなで食べ物を作ることって、DNAか何かに組み込まれている、
落ち着く、というひとつの部分じゃないかと思うんです。」
「甲州みそ」や「米みそ」を作ることができる「手前みそ教室」。
「甲州みそ」とは、米こうじと麦こうじを合わせて発酵させた、山梨の“地味噌”です。
「五味醤油」で作られる「甲州やまごみそ」は、
戦後から変わらずに使っている木桶で、仕込みをしているのが特徴。
木桶に住み着いた菌が味の決め手。
昔ながらの製法で、半年以上の時間をかけて作られた無添加の味噌です。
時間をかけて、食べ物ができるのを待つというのは、
将来に向けて、自分が気持ちよく生きる投資だと、五味さんは語ります。
「最終的に、出来上がった味噌が、人によって違ったり、
置いておく場所でも味が違うんですよね。
1個1個の違いを、出来上がった後にみんなで比べるのも楽しいと思います。
作っている時間もいいし、待っている時間もいいなと思って活動しています。」