みらい図鑑

VOL.223「富山の薬売りの“紙風船”」

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江戸時代から今に続く、「富山の薬売り」。

薬を手に訪問したお宅で”おまけ”として、
薬の商品名や、製薬会社のロゴを入れて配っていたのが、コロンとした四角い「紙風船」。

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遊び道具が少なかった時代において、
たくさんの子どもたちを笑顔にしてきた富山の文化ですが、
売り物でもない紙風船を作る後継者は、めっきり減ってしまいました。

そんななか、この伝統を終わらせてはいけない、と、
富山県で約140年続く、医薬品パッケージをメインに手掛ける老舗印刷メーカー、
「富山スガキ」が立ち上げたのが、新たな紙製品ブランド、「cusuri」のkamifu-sen。

作っているのは、モダンで可愛いデザインの紙風船です。

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プロジェクトを担当するデザイナー、名越恵美(なごし・えみ)さんのお話です。

「もとからうちは、紙風船を作っていた会社なんですよ。
現在も作っている会社は、富山県内でも、ほぼ、うちだけという状況です。
なんとかしないと、伝統が終わってしまう、という危機感がありました。

今までは、タダでもらえるものだったものを、
新たに、時代に合うようにデザインして、
販売したらいいんじゃないか、という考えにたどり着きました。」

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模様を合わせて紙を折り、角がきれいになるように貼り合わせるのは、熟練の技。

手作業での作り方はそのままに、
相撲取りやダルマ、こいのぼりやフルーツなどをモチーフにした絵柄で、
インテリア雑貨としても喜ばれそうな「kamifu-sen」をつくり、その魅力を発信しています。

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「cusuri」のkamifu-senについて、
名越さんはこんな思いを抱いています。

「“富山の薬売りの四角い紙風船”、という長い歴史の中に、
新しいストーリーとして、
わたしたちのブランドが加わればいいなと思っています。」

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未来へ残すために、おまけではなく、販売できる商品を作ろう、
という想いから生まれた紙風船。

懐かしいのに、どこか新しい。
お部屋にひとつあれば、気持ちがホッと安らぎそうですね。