みらい図鑑

VOL.268「ハリケーンランプ」

radikoで再生する
null

嵐のなかでも消えない炎。
そんな理由から名付けられたオイルランプが「ハリケーンランプ」。

リキッドキャンドルオイルをランプに注ぎ、
一度火を灯すと、6〜7時間、消えることなく安定して燃え続けます。

そんな「ハリケーンランプ」を作っている日本で唯一の会社が
大阪府八尾市にある、
大正13年創業の老舗ランプメーカー「WINGED WHEEL」。

null

昔ながらの製法にこだわって、プレス機を操り、
ブリキの一枚板から全てのパーツを作って、ランプを組み立てていきます。

作業工程は、およそ300。

その全てをひとりで仕上げているのが、
国内最後といわれるハリケーンランプ職人、別所由加(べっしょ・ゆか)さんです。

null

「やっぱり職人の仕事っていうのは、
理屈だけじゃなくて、金型であったり機械であったり、
そういったものと一心同体になることなんです。

わたしはいつも、仲良くなる、と表現しているんですが、
一緒にがんばる、という気持ちを持っていないと、
機械も考えているようには動いてくれません。」

null

「ハリケーンランプ」を日本で初めて完成させたのは、別所さんの曽祖父でした。

当時、世界各国に輸出を展開し、成功を収めていましたが、
時代の流れとともにランプ文化が衰退し、祖父の時代に会社が倒産。

そこから努力を重ねて再起を果たし、
以前と変わらないランプを作り続けています。

null

「毎日、ずっと考え続けていけば、
きっと、道は開けていくのではないかなと思っているんです。
わたしが小学6年生の頃に、一度、会社は倒産していて、
母とふたりでなんとか頑張って生きていこうとやってきました。

母が技術を残したいと会社を再起して、私もそこから引き継いだんですね。
どんなことがあっても、
絶対になんとかできるんじゃないか、という気持ちがすごくあります。」

null

創業当時から変わらない炎の美しさと安定力、
そして、現代にも馴染む魅力的なデザインで、
着実に愛好者を増やしていった「WINGED WHEEL」の「ハリケーンランプ」。

コロナ禍でのアウトドアブームもあり、現在、予約注文が殺到。
手元に届くまで5年から8年かかるといいます。

null

最後の日本製ランプを、ただただ、未来にどう残していけるか。

そこに全てをかけているという別所さんの想いは、
「ハリケーンランプ」を手に取った人に受け継がれ、
これからも火を灯し続けていきます。