みらい図鑑

VOL.290「松阪木綿」

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江戸時代に“粋なモノの象徴”として愛された、
「松阪木綿(まつさかもめん)」。

500年の歴史を持つ三重県松阪市の伝統工芸です。


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かつて、大陸から来た、機織りの技術者たちが松阪に住みつき、
その技術を伝えたのが始まりで、
地域は日本の紡織の中心地として栄えました。


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色は、天然の藍で染めた、本藍染め。

藍の濃淡だけで、縦縞やチェックといった縞模様を描くのが特徴で、
縞といえば、松阪木綿が代表的な存在でした。

最盛期には、千を上回る織元が松阪にあったものの、現在はたったの一軒。


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そんな地域の文化を未来へと伝えたいと、
「丸川商店」というブランドを立ち上げたのは、
松阪で生まれ育ったグラフィックデザイナーの丸川竜也さん。

松阪木綿を使った袋物や日記帳など、さまざまな商品を展開しています。

「松阪木綿は、もともとは着物用の生地ですので、
本来は、着物にするときに最も柄が“映える”んですが、
それを親しんでいただく入り口として、
ぼくたちは、色々なプロダクトを作っています。」


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江戸時代に松阪木綿が大流行したのは、
贅沢を禁止する法令があったことに関係しています。

「松阪木綿は、一見、地味で無地に見えるんですね。
でも、よく見ると、細かい縦筋が入っていることが、“粋”と言われました。
非常に優れた職人芸が、そこにはあるんです。」

派手な着物を堂々と着られなかった江戸っ子にとって、
松阪木綿は、隠れたおしゃれが楽しめる大事なアイテム。

年間の売り上げは、当時の江戸の人口の半分にあたる数を誇っていたといいます。


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松阪木綿の独特の手触りや肌触りに、
まず、親しんでもらいたいと語る丸川さん。

「機械には出せない手作業ならではのぬくもりもあります。
そして、効率ばかりを追求する現代のモノづくりというものが、
残念ながらこぼしてきた大切なものが、
ちゃんとそこには残っているなと感じるんです。」


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500年続くモノづくり。

その魅力を未来へと伝えていくため、
地元の子どもたちに触れてもらう機会もたくさん作っていきたい。

そんな想いを胸に、
丸川さんは松阪木綿の新しい可能性に挑戦しています。