みらい図鑑

VOL.331「麦わら帽子」

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古くから「麦わら帽子」の生産が盛んな町、埼玉県春日部市。

かつて、米や麦の栽培が盛んだったこの土地でおこなわれていたのが、
収穫した麦の「茎」の部分を使った、麦わら帽子の素材づくり。

その後、海外から工業用ミシンが輸入されたことで、
麦わら帽子の生産が一気に広がり、町の産業として定着していきました。

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伝統工芸品として知られている、春日部市の麦わら帽子ですが、
後継者不足の問題から、
ここ10年ほどの間に、ほとんどの工場が廃業を余儀なくされたといいます。

そんななか、麦わら帽子が量産できる工場として、
唯一、町に残るのが、明治13年創業の「田中帽子店」。

天然素材を専門とし、
“一つ一つ、すべての工程が職人の手仕事であること”が、こだわりです。

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「手作りなので、同じ形のものを作っていても、
一個一個、やっぱり、若干違うんですね。
それはミスではありません。
同じ形を作っていても、一個一個、違うんです。」

そう教えてくれたのは、「田中帽子店」の6代目、田中 優さん。

日除けに最適で、麦わら帽子をかぶると涼しいよね、と思ってもらえるように、
日本一、かぶりやすい麦わら帽子を作ることを目標としています。

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「田中帽子店」が長く続けていられるのは、
地域の人々に愛されているからこそ、と田中さんは話します。

誰かに贈り物をする時は、地場のものをプレゼントしたい、
そんな想いで、麦わら帽子を買い求めに来る多くの地元客。

春日部の人たちの郷土愛を、年々、実感しているといいます。

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麦わら帽子を軸としながらも、
一代一代、かわるごとに新しいことにトライする「田中帽子店」。

いま、田中さんは、一見、ハードルが高そうに思われがちな麦わら帽子のイメージを
徐々に変えていきたいと考えています。

「好きな人だけが被る嗜好品ではなく、
必需品として、一般の普通の方にこそ、かぶってほしいですね。」

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夏、町のいろんな場所で、麦わら帽子をかぶっている人々の光景を頭に浮かべながら、
この先も仕事をしていきたい。

春日部市の伝統工芸品は、
そんな田中さんの想いとともに、未来へと受け継がれていきます。