2008年1月13日
中上健次 『十九歳の地図』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「成人の日」の前日にちなんで選んだのは、中上健次の「十九歳の地図」。発表されたのは1973年ですが、今の10代が読んでも共感できる作品。小川洋子さんも「10代に読んで欲しい日本の小説」のひとつに選んでいます。主人公は、新聞配達をしながら予備校に通う十九歳の少年。ノートに自分が配達している場所の地図を書き、きにくわない家に×印を付けていきます。その家に悪いことをされた訳でもないのに、むかつくという理由で×印を付けていく少年。それは社会への怒り、そして自分に対する憎しみ。10代の若者だったら誰もが感じたことのある得体の知れない「理由なき怒り」が描かれています。

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