2008年6月8日
森茉莉 『父の帽子』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1903年(明治36年)文豪・森鴎外の長女として生まれた森茉莉。鴎外が41歳の時の子供だったこともあって、小さい時から可愛がられて育ち、16歳の頃まで父の膝に座っていたというエピソードも残っているほど。その父親・鴎外が亡くなって35年たった1957年、はじめて出した随筆集が「父の帽子」です。この作品でデビューすることになった森茉莉。その理由のひとつはお金を稼ぐため。2度の離婚後、仕事についていなかったうえ、ちょうどこの頃、父・森鴎外の印税の期限が切れたため、文筆家になる決心をします。それは森茉莉が54歳の時。遅いデビューではありますが、「父の帽子」は高い評価を受けるのです。

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