2016年3月20日
横光利一
『春は馬車に乗って』
 (新潮文庫)

「春は馬車に乗って」は、横光利一の体験に基づいて書かれたもの。この小説が発表されたのが大正15年。その年の6月に、彼は妻を結核で亡くしています。彼女は、横光利一の友人で作家・小島勗の妹「キミ」。しかし二人の関係を小島勗に反対されたため、それを押し切り同棲をはじめました。実際に妻を看取った横光利一。その時の心境はどんなものだったのでしょうか?小説「春は馬車に乗って」を読むと、妻への愛情とともに、死に向かう人間を冷静に見つめ、その内面を描こうとする作家・横光利一の視線を感じます。そしてもうひとつの代表作「機械」もあわせて読むと、この作家が持つ様々な魅力を感じることができるのです。

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