2017年2月19日
谷崎潤一郎
『猫と庄造と二人のおんな』
 (新潮文庫)

結局、愛するリリーを品子に譲る決心をする庄造。しかし気になって気になって、品子の家にリリーの様子を見に行ってしまい、それはまさに品子の思う壺なのです。谷崎潤一郎は「春琴抄」を発表した翌年の昭和9年にこの短編小説を執筆したと言われています。マゾヒズムさえも感じる究極の愛を描いた「春琴抄」と、人間のゆがんだ心情をコミカルに描いた「猫と庄造と二人のおんな」。この両方が書ける谷崎のレンジの広さはさすが文豪。さらに今回の短編小説では、家庭の細々したところまで鋭く観察していることがわかります。重厚な作品だけを追求した作家が文豪とは限りません。世の中を見る視点も表現方法も幅広い。それが文豪・谷崎潤一郎の魅力です。

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