2017年9月3日
永井龍男
『胡桃割りーある少年に』
 (中公文庫)

「くるみ」の硬さが象徴する少年の成長物語。簡潔な描写の中に、少年の複雑な心理が表現されています。永井龍男は、明治に生まれ、大正、昭和そして平成と作品を発表し続けた作家。「短篇の名手」と呼ばれ、また23歳の時に文藝春秋社に入社。芥川賞・直木賞が創設された時に常任理事も務め、芥川賞・直木賞の「育ての親」とも呼ばれています。48歳から53歳までは直木賞、54歳から73歳までは芥川賞の選考委員でもありました。時代を超えて活躍した作家であり、日本の文学界になくてはならない存在だった永井龍男。あらためてその作品を味わってみると、不思議なまでに余韻が残ります。学生時代にこの作品に出会った方の心の中にも、その余韻は静かに眠っているのではないでしょうか?

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