2018年5月13日

三浦綾子
『母』
(角川文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「母の日」にちなんで選んだのは、三浦綾子さんの小説「母」。日本のプロレタリア文学の代表作「蟹工船」で知られる作家・小林多喜二のお母さんを描いた作品です。その母の名前はセキ。明治6年、秋田の小さな村に生まれ、13歳で嫁ぎ、苦労しながら子供たちを育てていきます。その次男が小林多喜二でした。しかし昭和4年、多喜二は勤めていた北海道拓殖銀行をクビになってしまいます。そして彼が発表した小説「蟹工船」は発売禁止となり、その4年後、特高警察に逮捕され拷問によって亡くなります。大切な息子を理不尽な形で奪われた母セキの苦しみはどれほど大きなものだったでしょうか?セキが語る多喜二の思い出が心に深く響いてきます。

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