2018年8月12日

トーマス・マン
『トニオ・クレーゲル』
(新潮文庫)

1903年、トーマス・マンが27歳の時に発表した小説「トニオ・クレーゲル」。彼は、この作品が一番自分の心に近いと語っています。主人公のトニオと同じようにドイツ北部の町リューベックで生まれたトーマス・マン。誇り高い父親とブラジル出身で自由な心を持つ母親に育てられ、物語の主人公トニオの生い立ちとも重なります。小説「トニオ・クレーゲル」は「父親と母親」の他「トニオとハンス」「トニオとインゲ」「市民と芸術家」など対立したふたつの概念が描かれています。そして主人公はそのどちらにも憧れと嫌悪、肯定と否定の感情を持っています。作家トーマス・マン自身、対立するふたつの概念の間で悩み、しかし屈することなく創作活動を続けてきたのではないでしょうか?

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