2018年12月9日

『仮名手本忠臣蔵』(松井今朝子訳)
(池澤夏樹=個人編集日本文学全集/河出書房新社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

師走と言えば「忠臣蔵」。12月14日、赤穂浪士四十七士が主君の仇である吉良上野介の屋敷に討ち入りしたことで知られています。今回取り上げた「仮名手本忠臣蔵」は、江戸時代に実際に起きた「赤穂事件」をもとに生まれた人形浄瑠璃や歌舞伎の名作。しかし実際に読んでみると、物語の舞台になっているのは足利尊氏が登場する南北朝時代。それは何故かというと、赤穂浪士の討ち入りは江戸時代に実際に起きた政治的事件だったため、当時、それを脚色することは許されなかったからです。そこで物語の設定を南北朝時代の騒乱を描いた「太平記」に移し替え、浅野内匠頭は「塩冶判官高定」、吉良上野介は「高武蔵守師直」として登場させているのです。

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