2018年12月23日

アンデルセン
『モミの木』
(岩波少年文庫)

数年たって美しく育ったモミの木は、クリスマスが近づくと切り倒され森を離れ、見知らぬ家のクリスマスツリーになりました。しかしモミの木の目線で見るクリスマスの風景は切ないものでした。プレゼントを手にした子供たちはツリーに目もくれずはしゃぎ、大人が話してくれる物語に夢中になっています。そしてクリスマスが終わると屋根裏部屋に連れていかれたモミの木。彼はハツカネズミにお話を聞かせ、ほんの一瞬しあわせを感じるのです。アンデルセンは、童話を子供の読み物と考えず、自分が人生で経験した悩みや喜び、恋の苦しみ、死への不安などすべての想いを込めて書いていたそうです。170年以上読み継がれているのは、彼の童話に人生の真実が映し出されているからかもしれません。

...前に戻る