2019年03月10日

多和田葉子
『献灯使』
(講談社文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

作家の多和田葉子さんは、1982年からドイツで暮らし、日本語とドイツ語の両方で小説や詩を発表されています。東日本大震災の発生もドイツで知り、その後、福島の被災地に行き強く感じたことを「献灯使」という小説に込めて発表されました。「献灯使」の主人公「義郎」とその曾孫「無名」。彼らが住んでいる日本は鎖国政策が取られ、外来語も使ってはいけません。老人は百歳を過ぎても健康で死を奪われたような状態。しかし子供たちは身体が弱く、小児科医の労働時間が増えるほどでした。「無名」の世話をしながら二人で暮らす「義郎」。そんな中「無名」が「献灯使」として海外へ旅立つ話が持ち上がります。

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