2019年04月07日

檀一雄
『花筐』
(光文社文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今から83年前の昭和11年、檀一雄が24歳の時に発表した短編小説「花筐」。若き日の三島由紀夫が愛読し小説家を志すきっかけにもなった作品です。また映画監督の大林宣彦さんが40年以上も前から映画化したいと願い、一昨年その夢を実現されました。舞台は波の音が響く架空の町。岬には大学予備校が建っています。この場所に通う榊山、鵜飼、吉良という3人の青年。彼らについて三島由紀夫は「少年時を経験した人であれば、否定しえない象徴的な存在」と綴っています。肉体的な情熱と隠し持っている深い闇。青年が持つ危うい刹那的感覚が交錯したその先にあるものは何なのか?行間の中に様々な想いが込められた作品です。

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