2019年04月28日

内田百
『件』
(ちくま文庫「冥途」)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1889年(明治22年)5月29日生まれの内田百閨B今年は生誕130年。地元・岡山県岡山市にある「吉備路文学館」でも特別展が開催されていて、「メロディアス・ライブラリー」でも代表作を味わってみました。取り上げたのは、大正10年、内田百閧ェ32歳の時に発表した短編小説「件」。主人公の私が「件」になってしまうという物語です。では「件」とは何なのか?「件」という漢字を見ると「人」+「牛」。この字のとおり顔は人間、身体は牛。さらにこの小説によると「件」は生まれて3日で死んでしまい、その間に人間の言葉で予言すると信じられています。その予言を聞くために「私」のもとに集まってくる人、人、人。その数、何千何万にも及びます。

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