2019年06月30日

トルーマン・カポーティ
『夜の樹』
(新潮文庫)

映画館で出会ったミリアムという少女は、その後、ミセス・ミラーの家を何度も訪ねてきてミラー夫人は追い詰められていきます。また短編集の表題作である「夜の樹」の主人公ケイという若い女性も、偶然汽車の中で出会った男女によって不安なものを与えられます。ミセス・ミラーもケイも、見ず知らずの他者に土足で踏み込まれ、そこから見えてくる彼女たちの心の闇。それは作者カポーティが抱えていたものだったのかもしれません。川本三郎さんの翻訳が素晴らしく、淡々と語られる中で読者自身も言いようのない不安な状況に追い込まれていきます。来週・再来週は番組スタート12周年を記念して永井荷風を特集。永井荷風を長年研究されている川本三郎さんにお話を伺います。お楽しみに。

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