2019年10月20日

里見ク
『秋日和』
(ポプラ社・百年文庫『秋』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

兄に作家の有島武郎を持ち、志賀直哉や武者小路実篤らが創刊した同人誌「白樺」に兄とともに参加していた作家の里見ク。その代表作の中から昭和35年の小説「秋日和」を選んでみました。映画監督の小津安二郎とも親交があったことで、小津監督と組んでいくつかの映画製作にも携わり、この「秋日和」も原節子さん主演で映画化されています。小説を読むとまさに小津映画のような印象。大きな事件が起こる訳ではないけれど、登場人物ひとりひとりの想いと会話を紡ぎながら人間関係を描いていきます。テーマも小津映画と同じように「家族」。夫を亡くした主人公の秋子とその娘アヤ子。その親子を心配するまわりの人たち。その心の情景のむこうにはいつも秋空が広がっています。

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