2019年11月24日

近松門左衛門 『女殺油地獄』
(池澤夏樹=個人編集日本文学全集、
桜庭一樹・訳)

遊女の小菊には他にも馴染みの客があり、それは河内屋与兵衛という油屋の息子。小菊が別のお客と野崎参りに来たことに因縁をつけ、また店の金を持ち出すなどどうしようもない男でした。実の母お沢も、義理の父である徳兵衛も勘当してしまうほどの放蕩息子。しかし結局、両親は与兵衛を不憫に思い、同じ町内にある油屋「豊島屋」の女房であるお吉に銭を渡してもらうよう頼むのです。しかしそれがきっかけで取り返しのつかない事件が起きてしまうのです。近松門左衛門は庶民の日常を描いた「世話物」と呼ばれる浄瑠璃の名手。この「女殺油地獄」を読むと、親離れ子離れの難しさは江戸時代も今も同じ。桜庭一樹さんの現代語訳で味わうと、さらにそのことがイキイキと伝わってきます。

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