2020年03月01日

赤川次郎
『早春物語』

(角川文庫 赤川次郎ベストセレクション17)

衝撃的な「プロローグ」のあと、本編がはじまる「早春物語」。物語の主人公は沖野瞳という17歳の少女。陸上部に所属する高校2年生です。両親と姉の4人家族ですが、父親は現在、単身赴任中。そんな沖野家に、ある日不思議な電話がかかります。瞳が受話器を取ると「君か。良かった」という見知らぬ男の声。そこから瞳はあることを疑い、電話で告げられた約束の場所へ出かけてしまうのです。まるで探偵のような行動を取る瞳。少女と大人の間で心が揺れ動きながら危険な道へと進んでいきます。「ミステリーとしての面白さがあり、それを支えているのは主人公である瞳の人間性」と小川洋子さん。発表から35年たった今、あらためて読んでも魅力的な作品です。

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