2020年04月19日

川端康成
『掌の小説』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

毎年4月16日の命日に合わせて取り上げている川端康成の作品。今年選んだのは「掌の小説」です。川端康成が20代の頃から40年あまりに渡って書き続けた掌編小説が122編収められている1冊。短編よりもさらに短く、たった2ページという掌編も掲載されています。この中からまず味わったのはリスナーの方からもリクエストをいただいた「雨傘」。父親の転勤で町を離れることが決まった少年と、彼が想いを寄せる少女との一瞬を描いた小説。二人は別れの写真を撮るために写真屋に入り、その心情が綴られています。仕草も想いもぎこちなく、淡く儚く物悲しい。しかし少年と少女の距離感がどこか生々しい、まさに川端康成ならではの一編です。

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