2020年06月07日

ディケンズ『信号手』
(河出文庫『憑かれた鏡〜エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談〜』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「オリバー・ツイスト」や「デイヴィッド・コパフィールド」「クリスマス・キャロル」と言った作品で知られるイギリスの作家チャールズ・ディケンズ。彼は1870年6月9日に58歳で亡くなっています。今年は没後150年。命日を前に代表作を味わってみました。選んだのは「信号手」という短編小説。深い切り通しの下を走る線路。その横の詰所で働く信号手。彼に起きた奇妙で恐ろしい物語が綴られています。イギリスでは1830年代から鉄道が引かれ始め、この小説が発表された1866年当時には全土に広がっていました。鉄道の建設によって増えたのが「切り通し」の風景。ディケンズは、科学の進歩を表わす場所を舞台に、非科学的な世界を描こうとしたのでしょうか?

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