2020年06月21日

川口松太郎『紅梅振袖』
(ちくま文庫『名短篇、さらにあり』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今回なぜ川口松太郎の小説「紅梅振袖」を取り上げたかというと、作家の北村薫さんと宮部みゆきさんが選んだ名短編ということもありますが、もうひとつの理由は、放送当日が「父の日」だから。川口松太郎は、俳優の川口浩さん、川口晶さんのお父様としてもかつて知られていた人物です。明治32年に浅草で生まれた川口松太郎。16歳の時に、作家の久保田万太郎に師事し、その後、講談師・悟道軒円玉の家に住み込んで口述筆記を手伝い、漢詩や江戸文学を学びました。昭和に入ると小説を発表。菊池寛に激賞され、昭和10年には「鶴八鶴次郎」という作品で、第一回「直木賞」を受賞。また映画でも話題となった小説「愛染かつら」も川口松太郎の代表作です。

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