2020年07月26日

江戸川乱歩
『鏡地獄』
(角川ホラー文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

江戸川乱歩というと、メロディアス・ライブラリーでは以前「人間椅子」を取り上げましたが、この作品から1年後の大正15年に発表されたのが、今回の「鏡地獄」。この小説に登場するのは、物の姿の映る物、ガラスやレンズ、鏡などに不思議な嗜好を持っている人物です。彼は、子供の頃から虫眼鏡や万花鏡をおもちゃとして親しみ、中学の時には授業で習った凹面鏡にはまり、中学を卒業すると上の学校に入ろうとせず、庭の空地に実験室を新築します。そこに天体望遠鏡を据え付け、星だけではなく人の暮らしまで盗み見るようになっていきます。エスカレートしていく彼の行動。その先に待っているのは、どんな鏡地獄なのでしょうか?

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