2020年11月22日

城山三郎
『そうか、もう君はいないのか』
(新潮文庫)

城山三郎さんと容子さんの出会いは運命的。まだお二人が学生の頃、偶然、同じ図書館に出かけ、たまたま休館だったことがきっかけでした。その頃から「行く行くは筆一本で生きたい」という将来への強い意志を持っていた城山さん。その夢を軽やかにサポートする容子さんの様子がとてもチャーミングです。そして容子さんの病がわかってからの日々。さらに亡くなったあと、その状態に慣れない城山さんは、ふと話しかけようとして、われに返り「そうか、もう君はいないのか」と思うのです。巻末には娘の井上紀子さんによるエッセイも掲載されていて、ひとり残されたあとの城山さんの姿がとても切ないです。小説「白い犬とワルツを」とともに「夫婦っていいなあ」と思う作品。今、結婚を考えている方にもおすすめです。

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