2021年1月31日

深沢七郎
『みちのくの人形たち』
(中公文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

作家としてデビューする前は、ギタリストとして活躍していた深沢七郎さん。日劇ミュージックホールに出演しながら書き上げた小説が「楢山節考」です。昭和31年、42歳の時にこの作品で第一回中央公論新人賞を受賞。三島由紀夫や正宗白鳥に激賞され、作家として注目されます。今回取り上げた「みちのくの人形たち」は、それから23年後、65歳の時に発表した短編小説。あらためて読んでいくと「楢山節考」とどこか共通するものを感じます。どちらも土着的な風習をもとに、死の淵に存在しているものを描こうとしている作品。どこか切なく恐ろしく。それは人間の心の奥に潜むものとも重なります。

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