2021年4月11日

石井遊佳
『百年泥』
(新潮文庫)

小説「百年泥」の主人公である「私」は、付き合っていた男のせいで多重債務者になり、その返済のため南インドのチェンナイで日本語教師として働くことになります。そして洪水による百年泥がきっかけで、「私」にも変化が起こります。タミル語で話す人たちの言っていることがわかるようになり、自分の人生の過去も泥の中から見出します。その過去にあるのは、極端に無口だった母親との関係・・・。現在と過去、リアリティと空想、インドと日本、笑いと哀しみ、そのすべてのものが地続きのように自然に描かれていく「百年泥」。スケールの大きな物語の中で、読者もその世界を自由に楽しむことができる作品です。

...前に戻る