2021年12月5日

徳田秋声『夜航船』
(『百年文庫 74 船』ポプラ社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

金沢の三文豪というと、泉鏡花、室生犀星そして徳田秋声の3人。徳田秋声は、日本の自然主義文学を代表する作家のひとり。1871年(明治4年)12月23日に生まれているので、今年は生誕150年。それにちなんで代表作の短編小説「夜航船」を味わってみました。東京の下町「霊岸島」から房州に向かう夜航船での出来事。汽船発着所は人で溢れ、乗り込んだ船もデッキには膝を入れる処もありません。語り手の「私」は、ふたりの娘を連れた老婆に場所を少し空け、窮屈な中で眠ります。すると午前三時頃、娘のひとりに起こされ、他愛もない会話をすることになります。ところがそれを知った老婆は、ひどく娘を叱るのです。

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