2022年1月9日

織田作之助
『馬地獄』
(筑摩書房)

大正2年、大阪市南区で生まれた織田作之助。彼が残した作品には大阪が多く描かれています。「夫婦善哉」は、法善寺横丁にあるぜんざい屋の店名をタイトルにした小説。物語の中にも「ぜんざい」をはじめ自由軒のカレーなど、大阪の美味しいものが登場します。そして「木の都」という小説は「大阪は木のない都だといわれているが、しかし私の幼時の記憶は不思議に木と結びついている」という言葉ではじまり、生国魂神社の老木など織田作之助にとって懐かしい風景が描かれています。さらに小説「アド・バルーン」は、戦時中に空襲が激しくなる中、消えゆく大阪を残そうと、焼け跡を歩いて書き記したそうです。織田作之助が作品の中に刻んだ大阪。文庫本を片手に、作品に登場する風景や味覚を味わう旅もしてみたいものです。

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