2022年3月27日

江見水蔭
『炭焼の煙』
(ポプラ社・百年文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今から153年前の明治2年、岡山県岡山市に生まれた江見水蔭。12歳の時、叔父のすすめで軍人を志し上京しますが、次第に文学に心惹かれ19歳の時に尾崎紅葉らが発足した「硯友社」の一員になります。しかし尾崎紅葉による「都会中心の写実小説」には次第に満足できなくなり、23歳の時、自然の描写にも重きをおいた文芸誌「小桜縅(こざくらおどし)」を発行。小説「炭焼の煙」はその4年後の明治29年の作品です。読んでいくと描写されている山の中に読者も入ってしまうかのよう。深い緑の中に川が流れ、その川の真ん中に島があり、その島には桜の木があって見事な花を付けています。

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