2022年7月24日

谷崎潤一郎
『台所太平記』
(中公文庫)

「初さん」「銀さん」「梅さん」「駒さん」など、文豪、千倉磊吉(ちくららいきち)の家で働く女中さんたちは、個性的でつわもの揃い。彼女たちが巻き起こす出来事を、磊吉は、親のように見守っています。しかし鋭い観察眼を持つ文豪のこと。時に彼女たちの容姿について辛辣に描写するなど、今の時代だったら「ハラスメント」にもなりかねない内容。それでも読者にそう感じさせないのは、常にその視点の中に愛情あふれるユーモアがあるからです。谷崎潤一郎の代表作「細雪」を正面玄関から描いた作品だとすれば、この「台所太平記」は、勝手口から描いた文学、と小川洋子さん。勝手口から覗くと、また違った文学の楽しさを感じます。

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