石丸:最終週は、“時を重ねながら、長く大切にしていきたいこと”をお伺いしたいと思います。
それは何でしょうか?
宮川:映画館で映画を観ることです。
石丸:素敵だな。
宮川:やっぱり、我々は役者だからね。
映画出身だからこそ映画に戻るというか、出演はもちろん、まず、観ることかな。僕は映画協会の会員でもあるので、毎年、ある映画の賞の投票をすることになっているんですよ。優秀な監督、脚本、主演男優とか。
石丸:うんうん。
宮川:ある年に、“やっぱり投票する以上は、しっかり観ようじゃないか”と思いたち、“映画館で年間100本観よう”って決めたの。
石丸:それはすごいことだよね。
宮川:それを頑張って達成していったら、がぜん投票が楽しくなってね。作品リストを見ながら、『これも観た、これも観た、どれにしよう?』と考えるのが楽しくて。それから、5〜6年、年間100本の目標を達成し続けているんですよ。
石丸:たくさん観ることによって、自分の中で引き出しが増えるし、映画自体の観方も変わってくるよね。
宮川:他の俳優の芝居が勉強になるっていうこともあるし、一方で、お客さんの反応っていうのも、ものすごく勉強になるんですよ。
石丸:映画館で観てるからね。
宮川:どんなお芝居に観客が笑って泣いて、感情を共有しているのかが分かるんですよね。
石丸:そんなふうに感情を共有しあった映画で、これが一番というのがあったら教えてもらえますか?
宮川:数年前にインドの「きっと、うまくいく」という映画を観たんだけど、ものすごく素晴らしい作品で。インドのアカデミー賞を14部門ぐらいとった名作で、スピルバーグが3回見たという触れ込みだったんですよ。その前評判に惹かれて観に行ったんだけども。こちらは、“そんなに簡単に感動しないよ、笑わないよ”と思うんだけど、それを軽々越えてきて。日本人って、なかなか映画館で感情を表さないじゃないですか? 大声で笑うことが恥ずかしい、とかね。でもその時は、みんなで笑って、泣いて、“映画ってこういうもんだよね”ということを再認識させてくれたの。
そんなことがあって、やっぱり映画ってみんなで感情をひとつにできると素晴らしいなって。そんな経験があった中で、去年「カメラを止めるな!」を観たんですよ。
石丸:うんうん。
宮川:公開2週目ぐらいで見たんだけど、お客さんもまだほとんど初見の人で。
だから、みんな心から笑って、“ついに日本にもこういう作品が来た”と嬉しかった。お客さんは、ほとんどが若い子だったんですよ。
映画関係者として、「映画の未来は暗くないじゃないか!」と思いましたね。
石丸:我々、見る選択肢が増えてしまったから、自ずと映画館から足が遠のいたりしていたじゃないですか。日本映画は特にそういうのがあって。でも最近、原点回帰というか、“やっぱり映画ってすごいんだぜ”っていう流れになってきている気がするんだけど。
宮川:うんうん、そうだね。
石丸:このあいだ、「万引き家族」を見たんですよ。
皆が挑んで作っていた。俳優もスタッフも。映画から俳優の石丸幹二にハッパがかかったんですね。映画の力って大きい。それから毎日観てるんですよ。
宮川:特に、そういう挑戦する作品に出会えた時って、すごく嬉しくなるじゃない?
石丸:嬉しくなるよね。
宮川:映画って、これまでに1万本以上の作品が作られているんだけど、まだまだ挑戦する余地があるんだなって。まだ映画の底が割れたわけじゃないんじゃないんだなって、それは嬉しいよね。