石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
清水:今日は「セカンドキャリア」についてです。
石丸:スピードスケートの選手でいらした清水さんは、セカンドキャリアに医療を選ばれました。なぜ、医療だったのでしょうか?
清水:僕は、もともと喘息を持っていて、その治療のために始めたのがスピードスケートだったんですね。そういう意味では、スケートは喘息をコントロールするための運動療法だったんです。
また、現役時代、怪我をして腰の手術をしているんですけども、その後の競技人生って常にリハビリとの戦いだったんです。
そう考えるとスポーツ選手には怪我がつきもので、みんなリハビリをしています。そのリハビリ経験って、体験すればするほど、身体の使い方や、また転倒しそうになった時の補助の仕方とかもわかるんです。けれども、経験だけで終わっていてアウトプットしてないんだなっていうのを感じたんですよね。
僕が現役を退こうって決めたとき、「次の人生どうしようかな」って考えたんです。多分それはスポーツ選手全員が悩むことで、オリンピックで金メダルを取っても次の人生どうしようかなって悩みを抱えている。そう考えた時、選択肢をもっと増やすべきだと思いました。10年20年30年っていう競技人生を次の人生で活かせれる形って何だろう、と考えだしたんです。
そんな中で、実際に病院や介護施設のリハビリを見学に行ったら、実は昔、僕たちがスポーツの現場でトレーニングをやってきたことを簡単にして取り入れていたんです。これは僕らアスリートがかかわるべき現場なのかな、と思いました。
石丸:身をもって体験していることですから、伝えやすいでしょうし、リハビリ受ける人がどんなふうになるのかも見通せますよね。
清水:そうですね。
石丸:スポーツ選手達の引退というのは、会社員に比べると早いじゃないですか。
いろんな方がいらっしゃると思うんですけども、競技を変えて別の競技に行かれる方もいますし、清水さんがおっしゃったような自分の経験を踏まえてそれを生かす、コーチになるとか、後進を育てるというのも多いと思うんです。そちらの道を選ぼうとはなさらなかったんですか?
清水:もちろんその道も考えました。
コーチとしてやってみないかというお話もいただいたこともあったんです。僕も指導したいっていう気持ちもあったんですけど、コーチを50歳や60歳まで続けた後、次の人生はどうなるのかなと考えたんです。
石丸:そこまで考えられたんですね。
清水:スケートだけで終わってしまうことも怖かったんですよね。金メダルを取ったからこそ何かもっと違う形を示していければ、多くのアスリートにとっての選択肢の広がりにも繋がるのかなと思いました。