石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
松之丞:今日は「演芸場」についてです。
石丸:演芸場は、松之丞さんにとっては、職場ですね。
松之丞:そうですね。私は、伝統芸能の講談という職業に就いています。
石丸:講談の歴史はどれくらいあるのですか?
松之丞:諸説あるのですが、赤松法印という僧侶が、徳川家康の御前で「太平記」という物語を読んだという説を起源とすると、400年から500年の歴史があります。
石丸:落語よりも歴史が古いのですね!講談は落語と多少形式が似ていますが……。
松之丞:はい。落語家さんですと、着物を着て、扇子を持って座布団の上に座って……といった感じですが、講談の場合は、講釈台という机があり、張り扇という道具を手に物語ります。張り扇は自分で作るんですよ。中に竹が入っていまして、西の内という特殊な和紙で巻いてあるんです。釈台に叩きつけるとバンバンという音がするので、これでリズムをとり、物語に抑揚をつけることができるんです。
石丸: 松之丞さんが初めて演芸場に行かれたときのお話を聞かせていただけますか?
松之丞: 17歳のとき、浅草演芸ホールに友達と寄席を観に行きました。
これが面白かったんですよ!
もちろん難しい言葉や、分からないこともあったのですが、周りが笑っているので、つられて笑ったりしていました。ちょっと背伸びを出来るような感じでもあり、“予備知識がなくてもこんなに面白いのか”と、思ったんです。
17歳の高校生が、高座の80歳を超えるおじいさんで笑っている。テレビメディアでは、比較的芸人さんは若いですよね。だから、カルチャーショックだったし、“これは面白い!”と思いました。新しい文化を発見したような気持ちになり、年中行くぐらい、どんどんハマっていきました。