石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
松之丞:今日は「襲名」についてです。
石丸:松之丞さんは昨年末、新しいお名前になることが発表されました。ご自身からお名前を申し上げていただけますでしょうか。
松之丞: 2020年2月11日から、神田松之丞改めまして、神田伯山という名前になります。
石丸:神田伯山というお名前は、講談界では古くからあるお名前ですよね。
松之丞:そうですね。150年くらい前からある名前で、講談界の代表的な名前のひとつです。
我々の中では大名跡という言い方をしますが、今回44年ぶりの復活ということで、これは誰も襲名できないのではないかとい講談界でも言われていましたが、今回縁があって襲名させていただくことになりました。
石丸:松之丞さんで何代目に当たるんでしょう?
松之丞:六代目ですね。
石丸:過去、神田伯山という名前を襲名された方達はどういう特色を持っていらっしゃったんですか?
松之丞:全員名人ですね。過去を遡ると名跡を継いでもダメな人はいるんです。落語界ではダメな人は外される場合もあります。
代数も結構いい加減で、「八の方が末広がりだから八にしよう」とか。そういういい加減な面白さがあるんです。でも、神田伯山という名前は、全員が全員名人なんです。
石丸:初代・神田伯山は、相当昔になりますよね。何か、特徴のようなものはあったのでしょうか?
松之丞:初代が売りにしていたネタがありまして。
「徳川天一坊」などがそうです。僕も継承していますし、代々の伯山が得意にしていたネタとは各々の時代によって違います。すべての伯山に敬意を表して、得意にしていたネタも覚えていこうとは思っています。
ただ、先代が44年も前なので、六代目は六代目のキャラクターというか…過去の先人たちに対して敬意を持ってるんです。
そういう思いは受け継ぎながら、なぞるのではなく、新しく作り出そうと思っています。
とはいえ、伯山という名前は大変大事な名前なので、今までとは責任が変わってきたと思います。