石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
松尾:今日は、私が尊敬してやまない「赤塚不二夫」さんについてです。
石丸:赤塚さんに興味を持たれたきっかけはなんだったんですか?
松尾:興味というか、気がついたときからそばにあるみたいな感じでした。
幼稚園のときに滑り台から落ちて右足を骨折して入院していたんですけれど、その時に子供の病棟が空いてなくて大人の病棟に入ったんです。
そこにいっぱい漫画が置いてあって、幼稚園児だったので字もそんなに読めないんですけど、兄がいたので教えてもらいながら読んでいました。
赤塚さんの絵って線がシンプルで可愛いじゃないですか。子供にとって飛びつきやすいんですよね。
石丸:赤塚さんといえば、「ひみつのアッコちゃん」や「天才バカボン」が思い浮かびます。
松尾:赤塚さんの作品って、子供が読んでも取っつきやすいし、病院の中で動き回ることも出来なくて鬱々としている中、笑わせてくれるものが近くにあるのはすごくいいなと思っていました。
石丸:ついものまねしたくなる魅力にも溢れてる作品が多いですよね。
松尾:「シェー!」は流行りましたね。
石丸:当時の子供たちみんながテレビでも知っていて、笑いというのはそこから教えてもらったような気がします。
松尾:そうなんです。赤塚さんが今の漫画家と違うところは、本人がスターなんですよね。
流行語も生まれましたし。ギャグ漫画から流行語が出るなんて、まずないじゃないですか。
石丸:確かにそうですね。
松尾:フレーズもののギャグとか、形のギャグとか、芸人ではなく漫画家一個人が生み出して現象を作っていたというのが、僕からしたらすごくインパクトがあります。
石丸:赤塚さんのどういうところが魅力だと思いますか?
松尾:殴る蹴るは当たり前だし、主人公が急に爆発したりと、意外と残酷なところもあったりするんです。
赤塚さんの人生について調べてみたりもしたんですけど、満州からの引き上げのときに結構ひどい目にあったりとか、人間のとてつもなく暴力的な側面を見て育っていらした方なんですよね。
でも、それを作品の中で悲しみとして表さずに笑いとして表現してるみたいなところが赤塚さんのすごいところだなと思います。
石丸:赤塚さんの漫画は、松尾さんの笑いの原点でもあるんですね。
松尾:そこは確かにあると思っています。