石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
首藤:今日は“楽をしないこと”についてです。
石丸:楽をしない、とは?
首藤:今はインターネット上で買い物ができますよね。
利用することもありますが、ネットで何かを買うときも時間があるときは外に買いに行くようにしています。
自分の目で見て、店員さんとコミュニケーションをとる。それを意識的にするようにしています。
実際に売り場まで足を運んだときに、店員さんと良いコミュニケーションがとれると、会話が弾みますよね。あるとき、カメラ屋さんに行ったんですけど、店員さんはいろんな情報をお持ちなので実際に会って話さないと分からなかっただろうと思ったんです。
石丸:書いてある文字だけでは計り知れない、いろんな情報がありますし、やはり販売員の人はプロですからね。
首藤:本当によく知ってらっしゃいます。しかし、楽をしないとか言いながら説明書を読むのがあまり好きじゃないんです(笑)。
なので、お店に行って話を聞いて帰ってくると全てインプットされているので、使いこなせるんですよね。
石丸:確かに!
首藤:なので、どんな小さなものでもなるべく自分で足を運んで買いに行こうと思ったのが“楽をしない”と思ったきっかけです。
石丸:楽をしないというよりは、良い生き方ですね。文明に頼るところは頼るけれど、自分の目で決める。目を養うという意味ではアーティストととして大事なことだと思います。
首藤:そうかもしれません。
石丸:今の仕事に関わる“楽をしないこと”に、どういうことがあると思いますか?
首藤:この仕事って自分の身体でしか表現できないもので、機械作業ではないと思うんです。
今は何でも機械になって、車も自動運転になったり…人が必要なくなる時代にどんどん進んでいるような感じがして…。
でも、僕のダンスも石丸さんの歌も、生身の身体でしか表現できないじゃないですか。
石丸:代わりがきかないですね。
首藤:表現というものはどれだけ進化をしても人間でなければダメだと思うんです。
そう信じているので、なるべく精神的にも普段の生活も、機械に頼らない生活をしていくことで自分がやっている仕事に繋がっていくのではないかと思っています。
石丸:我々の仕事は、とことん突き詰めて磨きをかけていくという意味では、「楽」には成しえないことですよね。
首藤:はい。そこに喜びを感じていたいなと思います。