石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
石井:今日は「根付」というものについてお話ししようと思います。
石丸:「根付」とは、なんでしょう?
石井:簡単に言うと昔のキーホルダーみたいなものですね。煙管などを入れておくケースには必ず紐で括る部分があって、そこにぶら下げておくような使い方をします。
石丸:歌舞伎を観に行くと、役者さんが着けていたりしますね。
あれは、おしゃれの一つでもあるんでしょうか?
石井:そうですね。女性も帯留めに着けていたりします。
石丸:昔の人達は必ずと言っていいほど根付を身に着けていたんですか?
石井:職人芸の粋を集めたような装飾品ですし、帯留めを着けられるような階層というか、ある程度の方じゃないと身に着けられなかったと思います。
石丸:今日は、石井さんの根付コレクションを実際に持ってきていただきました。
これは、ものすごく細かな彫刻がしてある翼の生えた天女ですね。こちら、素材は何でできているんですか?
石井:象牙だと思います。
石丸:ということは、相当昔のものですね。彫り方も大変細かいです。
石井:これなんかは海の幸が彫刻してあるんですけど、中を開けると男女が変なことしてるっていう(笑)。
石丸:ちょっと大人向けのものですね(笑)。
石井:大店の旦那なんかはこういうものを持って吉原とか遊びに行ったんじゃないですかね。
石丸:粋ですね。こちらは江戸時代のものなんですか?
石井:江戸時代から明治前期くらいのものだと思います。これらは10年ぐらいかけて集めたものなんです。
京都に買い付けに行って手に入れたものもありますし、ファンの方からプレゼントしてもらったものもあります。
石丸:そもそも、根付をお好きになったきっかけはなんだったんですか?
石井:お袋が着物好きで、僕も、着物を着ているお袋が好きだったんです。
あるとき、お袋が帯留めの横に1枚の葉っぱがリアルに彫刻されたものをぶら下げていて、「これ何?」って聞いたところ「根付っていうんだよ」と教えてくれて。
昔は男の人も女の人も自分の持ち物に着けて楽しんでいたんだよ、と。
石丸:根付というものについて全くの無知だったんですけども、こうやって拝見していると自分の好きな根付を探してみたいなと思いますね。
石井:根付ひとつ取っても、厳しい時代からだんだんと平和になり、みんなが娯楽を求めていく時代背景が見えると言いますか。
それこそ、落語とかが発展していくのと同じように根付も変わっているんですよね。
石丸:これから先の根付がどうなっていくのかも楽しみですね。