石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
石井:大切にしている「言葉」です。皆さん、座右の銘みたいなものを一つずつ持っていると思うんです。
僕もいっぱいありますけど、その中のいくつかをご紹介したいと思います。
石丸:よろしくお願いいたします。
石井:米米CLUB時代に、みんなでよく言っていたことがあるんですよ。
落語にも出てくるんですけど、「いい加減」という言葉がありますよね。「おまえ、いい加減だな」とか、悪い意味で使いますよね。
でも、これを漢字にすると「良い加減」になるんですよね。
石丸:そうですね。
石井:「良い加減の温度の温泉だね」とか、“良い加減”っていう言葉って素晴らしくないですか?
石丸:そう言われてみるとそうですね。
石井:子育てもそうだし、友達との会話も、恋人ともそうだし…相手によって“加減”を変えないといけないですよね?
石丸:そうですね。ご挨拶代わりに「ご加減いかがですか?」と、伺いますよね。
石井:本来“加減”という言葉は、良い言葉なんですけどね。
“いい加減”という悪口になってしまったから、「加減」という言葉が使われなくなってしまいましたけど。人間、加減という言葉は大事だと思います。
あとは「IT/イット」という、映画を観たんですけど。
石丸:あのピエロが出てくる映画ですよね、私も観ました。
石井:その中の台詞なんですけど、「無駄な恋なんてない」という言葉があって。
昔の仲間で集まって、建築家やデザイナーとか、みんな素晴らしい仕事をしているんだけど、やっぱりどこか弱いところがあって。
恋に挫折していたり、ある人は自分の本当にやりたい仕事はなかなかやれていなかったり…実は、そういう悩みをみんな抱えていて、話の中で少しずつ弱さが出てくるんですよ。
石丸:はい。
石井:その中で、一人の大成功した女の子が「本当に最低の恋しかしてないのよね」と言って、ちょっと涙ぐんでいるんですね。
そして男の人が、「でもね、無駄な恋ってないと思うよ。君も苦労したかもしれないけど、その恋が大人にしてくれたんだよ」という台詞があるんですよ。
石丸:励ましの言葉ですね。
石井:良い言葉だなと思って、僕の歌詞に何曲か入れてる気がします(笑)。
石丸:そうですね、悩んでる人、もがいている人がいっぱいいる中で、こういう言葉は光のように感じるのかもしれません。
石井:「無駄な恋」と言っているけど、「無駄な事なんて」に置き換えてみると、「遠回りしちゃったわ」と思っている人もいるかもしれないけど、結局、その時間はその人のことを作っているんですよね。
石丸:そういうことですね。
石井:きっと、いろんなことを学んでいると思うんです。
石丸:捉え方がとてもポジティブですよね。
石井:日本人はちょっとネガティブに考えやすい民族なので、もう少しポジティブに物事を考えるには、ちょうど良い言葉かなと思います。
この“恋”のところに、いろんな言葉を当てはめると良いんじゃないかなと思います。